初めての株主総会への参加が決まったとき、会場がホテルと聞いて迷わず着物を選びました。

せっかくの格式ある場所なら、やっぱりビシッと決めたい。そんな気持ちでした。

スーツの海の中で

当日、会場に着くとスーツ姿の参加者ばかり。着物姿は私だけのようでしたが、不思議と緊張よりも「来てよかった」という気持ちの方が強くなりました。

議案の説明が続く中、「株主優待つけろ!」と声を荒げる方もいて、会場の空気が一瞬ぴんと張りました。

その後の質疑応答では、株主の皆さんの率直な意見を聞くことができ、普段は見えない会社や株主の視点を知る貴重な機会となりました。

偶然が生んだ出会い

総会後、会場近くをふらりと歩いていると、趣のある骨董品屋を発見。

店内では、自分用にワイングラス、シャンパングラス、日本酒用のグラスを。

仕事用には菓子器と銘々皿を選びました。気づけばお酒用の器ばかり。まあ、らしいかもしれません。

器を眺めていると、「さっき総会にいましたよね?」と声をかけられました。

チャリンコで来たというラフな装いのおじさんでした。株の話から始まり、私の仕事のことまで聞いてくださって。

「若いのに色々考えててすごいですね」

そう言われて、少し照れながら名刺とショップカードを交換しました。

着物が結んだ縁

考えてみれば、普段着だったら声をかけられることはなかったかもしれません。着物という装いが、世代を超えた自然な会話のきっかけを作ってくれたのです。

その後、すしざんまいでのひとりランチ。握りと一緒に銀盤(純米大吟醸)を一合いただきながら、さっきの出会いを思い返していました。

いつもと違う一日を作る力

着物を着ると、不思議といつもと違う一日になります。背筋が伸び、所作が丁寧になり、周りの方との距離も自然と縮まる。それは茶道で学んだ「相手を思いやる心」が、着物を通じて表れるからかもしれません。

株主総会という少し硬い場面でも、骨董品屋での偶然の出会いでも、着物は私と周りの人をつなぐ架け橋となってくれました。

日本の美しい文化である着物。特別な日だけでなく、ちょっとした外出にも取り入れてみると、思いがけない素敵な出来事が待っているかもしれません。